この美影は、憑神だの悪の組織ーズだのの進行してない西暦20XX年に暮らしている普通のじょしこーせーである。
『
………SYSTEM REBOOT
……駆動系チェック。OK
……エネルギー伝達ラインチェック。OK
…OS:スズカミカゲチェック。OK
…きどうシマス
』
ううん、いつになっても目覚めの起動チェックは慣れへんなぁ……。
ウチはつい人間だったころの癖で目元をこしこししながら寝床から起き上がった。
視界に浮いて表示されているデジタル時計の表記は午前6時半、今日はまだ余裕あるな。
布団から這い出してうーんと伸びをひとつするとウチは部屋においている姿見を覗き込む……。
そこにうつるのは、キツネ型の巫女さんのような姿をしたロボットやった。
もちろんウチがわらったりすると同じようにわらう……。
つまりウチこと”鈴華美影”はこのキツネ型のロボットなのであった。
「しっかしほんまかなわんよなぁ……。」
ぼやきながらウチは棚の上の写真立てを見つめる。
写真の中のウチは黒い長髪のセーラー服の普通の女の子。
そう、前まではウチはこの写真の中の女の子やったんよなぁ。
このような姿になってしまったのは世間でちょくちょく発生する謎の奇病
【ロボちぇんシンドローム】なるものを患ってしまったからなんやな……。
あれはさかのぼること数ヶ月ほどの晴れた日、ウチはすんでる神社のお祭りの準備でいろいろ荷物をかたづけとったんよ。
ちょうど業者さんがもってきた、お祭りのイベント用のキャラクターのきぐるみを境内の倉庫に持ち運ぼうとしたその時!
ロボちぇんシンドロームを発症してもうてなぁ。
しっとる?あれってホンマわけわからんうちに自分の体がぴかーって青く光ったら、
近くの物と交じり合ったりそのままの状態だったりして問答無用でロボットになるんよ。
ウチはタイミング悪くきぐるみの入った箱を抱えてたせいでソレととけあってしもうてな……。
頭が重くなったと思ったらふた周りほどおおきなってその顔はきぐるみのキャラクターのキツネとウチをまぜこぜたかのような顔に
視界が下がったと思うとウチの着てた巫女装束は体に溶け込んで装甲にかわり 腕も袖が硬いパーツ状になってな?
お尻あたりがムズムズしたと思ったら尻尾が生えたことを頭のどこかが知らせてきて。
そらもう、話には聞いてたけど自分がなるとはおもわんからテンパるやん?
その間に頭ん中まで変化して視界がゲーム画面みてるかのようになったところで
ウチの意識は余分なプログラムデータとして圧縮されて途絶えたんや……。
なんで変わっていく様子覚えてるかって?記憶のログにいろいろ残ってんねんよなぁあと監視カメラが移してたのを後で見たのもあるわ。
ホンマけったいな光景やで! ぴかーってひかったとおもったら抱え取る箱がきえてあたふたしてる間にどんどん漫画とかゲームに出てきそうな姿に変わるんやもん。
おっと話がそれたわ、そんでその後のウチはきぐるみの用途を体が読みとったんか数ヶ月の間は風船配りのマスコットロボっととして動いてた見たいやなぁ。
そうして、ようやく体とプログラムが最適化されて空きスペースにウチの意識が再解凍されて今にいたるっちゅーわけ。
あんときのおかんらのほっとした顔とその後にどう説明しようっていう困った顔はばっちり記録されとるわ。
しばらくは戸籍の書き換えから各種登録変更の手続きなどなどに駆け回りようやっと先日、一応”鈴華美影”として日常に戻れることになった訳や。
ロボットの体になった割にはこうすごいパワー!とかそんなんも別になく
ウチのできるようになったことといえば袖ごと変化した腕から風船を膨らませれること位って言う
めっちゃ微妙な感じ。
友達とかは半重力装置の足で浮いたりとかなんやけどなぁ。
とまぁまだ自我が解凍されたてで若干変化に意識が追いついてないわけやけど。なったもんはしゃーないしこの体で生きていくことになったんやな。
っと二十分ほど昔の記憶のログを見返していたウチは学校に通う準備のため軽く体にエアスプレーを吹き汚れを飛ばすと
かばんをつかんでぽてぽてと茶の間にでた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
茶の間ではわが妹ながらかわいらしい朗らかな笑顔妹の音乃が
「あっねえさまおはよー♪」
っとご飯を食べながら声をかけてきたわ。
今日の朝ごはんはトーストとスクランブルエッグにカリカリベーコンとミニサラダ。
しかしロボットになってしまったウチには無用の長物 ヨヨヨ。
「しかし最近ますますロボちぇんにかかる人増えてるそうですよー。学校でも今週だけで5人もロボットになっちゃいましたし。」
「なんなんやろなーこれほんま。」
「ところでおかんは?」
「自治会の人から呼び出されたみたいですー。」
「ふーん。」
ウチはお尻のあたりからコードを引っ張り出すとコンセントにつなぎそのままテレビを見ている音乃の横に座った。
ちなみにうちの椅子も尻尾がひっかからんように背もたれのない別のやつなんやなぁ。
っと音乃とだべりながら尻尾に予備の電力を溜めたウチは、時間も時間だしコードを戻して登校っと。
音乃も食器を片付けに行ったわ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
石段をぴょんぴょこと跳ねて降りたウチはぺこりと神社でもあり家の入り口でもある鳥居に
「いってきまーす。」
と声をかけて登校するんやった。
見慣れた光景ではあるけどやはりその視界は、ロボットの物になってしまったのでセンサーがいろんな情報をだしてくる。
やれ、学校到着予定時刻だの、GPSによる友達らが近くにいるかどうかだのそんなの、まだ体が慣れてへんからイラン情報の止め方もちょっとわからんのよなぁ。
朝の登校出社時間だから人通りは多いものの普通の人々に混じっていろんなロボットたちもおるなぁ。
妖精型の小さなロボットは三丁目の滝口さんちの大輔くんかな?体に合わせたサイズのランドセルをしょって友達をおっかけとるわ。
毎朝犬の散歩が日課の田中さんは散歩中にロボちぇんを発症した為に愛犬と合体してしもうた。それ以来は犬みみ娘のようなロボットの姿でひとりで散歩しとるわ。
おっあっこで信号待ちしとるんは、幼馴染の洲本幸やん
「おっはよーすもっちゃん!」
と声をかけると
「おはっーすずー・・・・・・ってうわ!!話には聞いてたけどすごいことなってんね!?」
めっちゃ驚かれた……。まぁロボットなってから会うのは初めてやからなぁ……。
幸い声はそのままやし面影はあるから気付いてはもらえたけど、これ学校行ってからのみんなも似た反応するんやろうなぁ。
「しっかし、おコンコンちゃん見たいなんになるとはねー。尻尾とかどうなってん?」
「ちょっ!やめくすぐったいって!!」
幸は理学コース選ぶだけあってロボットとか好きやからうちの体に興味深深!
でもロボットの体だって感圧センサーや異常を認識するための擬似痛覚とかもあるのでその……。
「ええかげんにせい!」
「はぎゅっ!?ごめんごめんついねー。」
「ほんまにもぅ!」
と思わずどついてもうた!まぁ見た目よりはふにゅんってしとる体やから痛くはないはずやけどな。
などとじゃれあってるうちに学校に着いたのであった。
案の定学校についてからクラスメイトに散々いじられたのであった!まぁ数ヶ月ぶりにじっくり顔あわすわけやしなぁ
しかも、ロボットになってりゃそりゃまぁなとは思うけど。
そんなこんなで放課後。
今日の境内掃除の当番はウチなのでさっさか帰ることにした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
帰ってからはやること済ませて、課題も終わらせたのでのんびりと茶の間で充電しながらすごしたんやな~。
この体なってから身は軽いし疲れることもあんまりないんやけど、バッテリーが減ってくると擬似的に疲れたりお腹がすくんよなぁ。
家族みんなと取り留めのない会話をしお風呂が空いたので行くことに~。
ロボットなんだけど防水は完璧なのでザバーっとシャワーも浴びれるし温度センサー越しだけどお湯に浸かって気持ちいって感じることもできるのは救いやね。
ぶくぶくと湯船に沈みながらふと、このままいくとそのうちみんなロボットに変わってしまうん?とか思いをめぐらしてしまった。まぁうちの考えることでもないかぁ。
そうして人間だった時と同じ用に布団に入って眠りにつくんやった。
ロボットなのに?っておもうかもやけど一日過ごすだけでいろんなデータたまるから整理するのに睡眠がいるんよねぇ。
初めて自我が戻った時、ソレに気付かんとずっとおきてたらたまったデータに圧迫されてまともに動かれへんようになったんよなぁ。
とまぁ明日もなれない体ながらも今までの日常を過ごせることに感謝しつつおやすみなさい。
『……SYSTEM SHUTDOWN
……OS:スズカミカゲめんてなんす開始
…………。』
ロボになったことに驚いたり焦ったり困ったりしながらも、日常生活を送っているのが楽しい作品ですよね、こちらも懐かしいです。
巫女と狐とロボのデザイン集合がまたいいですよね、ポニテもかわいいです。
「ありこゃーん。慣れたらそう悪くないゃん」