この世界では本当の姉妹ってことで
それは突然に起こりました。
世間で流行している謎の奇病【ロボちぇんシンドローム】に
私こと鈴華音乃の敬愛している姉さま”鈴華美影”が発症してしまったのです。
姉さまは、お祭りの準備中にロボちぇんシンドロームに発症し、
運んでいた狐のキャラクター”おコンコンちゃん”の着ぐるみと融合したマスコットロボットになってしまったのです。
それから数ヶ月間はおコンコンちゃんとしてプログラムされたとおりの行動つまりお客さんを呼んだりちびっ子に風船をプレゼントしたりしていたのですが、
二週間ほど前にようやく最適化が終わり姉さまの自我を解凍できたのです。
ロボちぇんにかかった人ってしばらくの間は行動プログラムが優先されて本当のロボット状態らしいんですね。
それで行動が最適化されていきようやく人格データが解凍されてもとの人物として動けるようになるんです。
やっと人格が解凍された姉さまは凄く取り乱しはしましたが三日ほどでロボットの体になった事をどうにか納得し
各種手続きも終わって一息着いたところなのです。
「おはよー音乃~♪」
「おはよー姉さま♪」
今日もまたぽてぽてとかわいらしい足音を立てながら姉さまが階段から降りて居間にやってきました。
もうすっかりロボットの体に慣れていつものように朝の挨拶。
私の朝ごはんを覗き見して姉さまは
「今日はお味噌汁に塩鮭かーええなぁ~。」
とこれまた日課のメニューをうらやむ感じに一言つぶやいて、お尻からコードを出してコンセントにつなぎました。
もはや日課となってるので私も特に何も思わず一緒にテレビを見ながらとりとめの無い話をしていたのです。
「ねえさま今日は何時くらいに帰ってきます?」
「んー体育あるしバッテリーの減りが早そうやからまっすぐ帰るつもりやし17時くらいかなぁ~。」
「じゃあ帰ったら一緒に買い物行きましょう!!今日はかあさまもとうさまも自治会の会議とかで遅くなるって言ってたので。」
「ういういOKOKんじゃ充電も済ましたし先いくなー。」
「はーい私もそろそろ準備~。」
姉さまはフルフルと頭をふると立ち上がって慣れた手つきでコードを体に収納しぽてぽてと音を立てて学校に向かいました。
その様子をかわいいなぁってひとしきり眺めた後、私も朝ごはんの後片付けをして学校に向かうことにしました。
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登校中に見かける風景も数年前とはすっかり様変わりしてしまっています。
ロボちぇんシンドロームは突然世界中で現れあっという間に世の中に溶け込んでしまいました。
治す方法は無いもののしばらくしたら特に問題もなく生活ができるせいでしょうかね?
今では、道行く人々の5分の1くらいはいろんな姿のロボットになっています。
集団登校中の小学生の一団と思わしき子達は目に当たるセンサーの形と髪に当たる部分の色以外はほとんど見分けがつかない感じでした。
多分一緒に居る時にロボちぇんを発症したんでしょうね。
車道にも車に混じってロボちぇんV型(乗り物型)にかかった人たちが信号待ちをしています。バイクベースだったり、SFアニメに出てきそうな浮遊する乗り物型で
友達でしょうか?これまたロボちぇんF型(架空の生き物型)な悪魔ロボさんがまたがっています。
とそんなこんなで、見かけは変わったけどもいつもと変わらない日常の風景を眺めながら学校に着いたのでした。
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いつも通りの授業を終えて、半分くらいはロボちぇんを発症したクラスメイトと軽く別れの挨拶を済ましたて家にまっすぐ帰ることにしました。
姉さまとお買い物の約束しているので。
久々に一緒に出かけるのでちょっとうきうきしながら帰宅し、宿題をすませつつ姉さまの帰りを待ちます。
ガラガラという引き戸の音とともに
「ただいま~」
いつもと変わりない帰宅の声にやりかけの宿題を中断して姉さまのおでむかえにいったのです。
「おかえり~ねえさま!」
「ちょっと荷物とか置いてくるからまっとってなー」
「はーい」
体についたほこりを軽く叩き落とした姉さまはぽてぽてと自室に荷物に置きに行きました。
歩くたびに揺れる尻尾かわいいなぁって思いながら待っていると
「お待たせー!んじゃいこか~。」
「はーい。」
と姉さまの手をつないだのです。
その時!!バシィ!と手に電気が流れたかのような衝撃が私に走りました!!
次の瞬間視界が真っ青になったと思うと姉さまの叫び声が聞こえました。
「おっ音乃!?」
「なんやどないしたんおねぇ?」
姉さまになにどうしたの?姉さまっていったつもりの私の台詞は姉さまの口調ででてきたのです。
「あっあんた・・・意識はなんともないん?」
「えっ別になんもあらへんけどなして?ってあれ口調が・・・?あれ?」
思えば視界もなんだか変な気がします。
右上に時間や気温が見えますし・・・?でもそれ以上に話そうとする言葉が姉さまの口調になってしまうのが落ち着きません。
私どうしちゃったんだろ・・・?
「ていうか音乃あんた・・・その・・・なんや・・・・・・ごめん多分ウチのせい・・・ごめんな・・・。」
なんとなく頭の隅では何が起こったのか理解しつつあるのですがそれ以上に申し訳なさそうにする姉さまを慰めるほうが大事と判断したので
「うっうちは大丈夫、ちょっと変わったけどうん音乃やで!!おねえの妹のな!!」
「意識は音乃のまんまっぽいなぁ・・・まぁとりあえず・・・鏡見てみい・・・。」
と落ち着きを取り戻した姉さまにうながされるまま玄関先においている姿見を見た私はさすがにびっくりしました!!
姿見に映るのは、私の特徴をどことなくかたどった巫女さんと招き猫を合わせたかのようなロボットだったのです。
「あぁうん・・・なんやそんな気はしたんやけど・・・ウチもしかして”タマネちゃん”ぽくなっとる?」
「うん・・・みごとに”タマネちゃん”やな・・・なんでやろ・・・。」
何度瞬きして姿見を見直しても私が写ってるはずの姿見に映ってるのは
“おコンコンちゃん”のお友達という設定の猫又のキャラクター”タマネちゃん”そっくりになってるんです。
「もしかしておねえのメモリーから読みとったんかな・・・?んーでもロボちぇん発症した割には意識はウチのまんまなんやね。」
「そういや学校のツレの友達の友達もロボちぇんになった奴とデート中にロボちぇんにかかってそん時は最適化済みとか聞いたような・・・。」
「んじゃそれやなぁ・・・。口調がこないなったんもおねえの言語ロジックコピーしたから?」
買い物どころじゃなくなった私と姉さまはとりあえずかあさまととおさまに連絡する事にしたんですけど・・・・・・。
「ええとスマホスマホ・・・・・・。ピッ通話モード起動シマス。んぁぁ?もしかしてスマホも体に入ったん?
便利っちゃ便利やけどええと・・・○9○-○××○-△△△■っと。prrrrr・・・・・・。」
「ええな・・・。ウチはそんな機能ついとらんのやけど・・・。」
スマホを探そうとしたら視界に電話番号入力のコンソールが出てきました。
戸惑いながらも番号を読み上げるとかあさまのスマホにつながりました。
「あっおかんー!!音乃やねんけど!!大変なん!!・・・・・・いやちゃうってふざけてるんやのうて!!・・・・・・。」
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その後は大変でした。かあさまは急いで帰ってきて私をロボちぇん専門の医者につれだしてくれたんですけども
そこでわかったのは、姉さまの行ってたとおり最適化済みのロボちぇん罹患者に触れた状態でロボちぇんを発症したら
最適化済になりやすいこと、その際に記憶データや言語ロジックがコピーされて上書きされたりする事。私は言語ロジックが姉さまのものに上書きされてしまったという事がわかりました。
とりあえず、明日各種手続きとかをするそうで今日はもう家に帰っていいといわれたので帰りました。
「参りましたぇ・・・・・・さすがに娘が二人ともからくり仕掛けになってしまうなんてことになりますとはねぇ・・・。」
「まぁなったものは仕方ないだろ・・・。美影の時とは違って人格はしっかりそのまま残ってるのが救いというか・・・。」
「ほんまごめん!ウチの不注意で・・・。」
「こればっかりはしかたないですぇ。とりあえず明日は役所で色々手続きしにいきますさかい、音乃も美影も今日はもうやすみんさいな。」
「「はーい」」
かあさまに促されて、姉さまと二人自室に戻って寝る事にしました。
「あっ音乃。これで汚れとか吹き飛ばしときウチはまだあるしな。」
「んっおおきに。おねえ~。」
姉さまが自室から出てくると私にぽいっとスプレー缶を投げてきました。
スプレー缶にフォーカスが当たると使い方などが一気に頭の中を走っていきました。
なるほどーこれで関節とかのゴミとかお掃除するんですね・・・。
姉さまと同じように・・・ふふ・・・。
実のところ私はロボットになってしまった姉さまに憧れすら感じていたのです。
かわいい見た目にりりしい中身のギャップや、体に慣れきって無いにもかかわらず自分よりも私に気をかけてくれる姉さま・・・。
ちょっとピンクな妄想に入りかけた頭をふるふるっと振って床につくことにしました。
おやすみなさい・・・・・・。
『……SYSTEM SHUTDOWN
……OS:スズカオトノめんてなんす開始
…………。チェック・・・・・・近隣ニ同系機ヲ確認・・・同期開始・・・・・・。』
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こうしてウチのロボット生活が恥末端やけど・・・。
まさかこの時はほとんど同系機といっても差支えが無い姿になってしまったがゆえのトラブルに気づけんかってんな・・・。
このあと思考ロジックまでウチとおねえが並列化してしもたのはまた別の話という事で・・・。
ちゅーかぶっちゃけおねえにいろんなことが筒抜けになって恥ずかしいねん!!っていうオチやけどな!
音乃がろぼちぇん発症して猫乃さん風にも見える変化をしているあたり、因果関係とかいろいろありそうですね、世界が異なっていても。
おコンコンちゃんと同一タイプのタマネちゃん、似ているところが同系列らしさ、異なるところが独自性になっていて、ロボらしさになっていると思います。
思考の並列化や言語が同じになったりも面白いですが、ロボだからコンセント繋いで充電、人間の普通の朝食をうらやむなど、文章のあちこちに面白い要素があふれていますよね。
ありがとうございますー!
折角なので元人間の自我のあるロボットってどういう風に感じるのかなーといった感じにしてみました。
今後この姉妹は眠るたびに情報共有しちゃうのでどんどん行動や思考パターンがそっくりになってしまいますとさ。